大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)253号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 相違点の看過、誤認について

(1) 成立に争いのない甲第二号証(第一引用例)によると、第一引用例には、その発明の一実施例に関し、「この研磨機(4)には水分の添加装置(6)が設けられ水分は多孔壁(7)を通つて研磨室(8)に入るようになつている。」(第一頁右下欄第七行ないし第九行)と記載されていること、その図面(本判決別紙図面(2))で、水分の添加装置(6)は、研磨機(4)の上方中央に、多孔壁(7)と間隔を離した位置に記載されており、右図面では、水分の添加装置(6)は、研磨室(8)の空間内には取り付けられておらず、研磨室(8)の外部上方に取り付けられている旨記載されていることが認められる。

しかしながら、前掲甲第二号証によると、第一引用例の特許請求の範囲に、「水分添加装置(6)を備えた多孔壁(7)からなる粒々摩擦式研磨装置(4)」との記載があることが認められ、この記載からすると、第一引用例記載の発明では、水分添加装置(6)を、粒々摩擦式研磨装置(4)の外部に位置させるか、内部に位置させるかについて、特に限定しているものではないということができる。しかも、水分添加装置(6)が粒々摩擦式研磨装置(4)の内部に取り付けられていることを排除する記載もないし、この点を排除することを示唆する旨の記載もないことが、前掲甲第二号証によつて認められる。

(2) ここで、本件出願当時の加湿精米装置についての技術水準をみるに、いずれも成立に争いのない乙第一号証(昭和三三年特許出願公告第一〇一六一号公報)、乙第二号証(昭和三五年特許出願公告第一三二八号公報)及び乙第三号証(昭和三九年実用新案出願公告第二二七三六号公報)によると、精白転子に穿設した小孔から、精白室内に水蒸気を添加した空気を噴出させるようにした加湿装置を、精白室の内部に取り付けた加湿精米装置が、右各公報に記載されていることが認められる。

第一引用例の記載が前記認定のとおりのものであることに加え、右認定の技術水準を参酌すると、第一引用例記載の発明は、加湿装置(水分添加装置(6))が精白室(粒々摩擦式研磨装置(4))の内部に取り付けられている構成のものを含んでいるものと認められる。

(3) 審決に、原告主張のような相違点の看過、誤認はない。

2 第二引用例記載の発明について

原告は、第二引用例にはそもそも、本願発明におけるような「米粒の流れ」は記載されていないと主張する。

しかしながら、審決が第二引用例記載の発明について認定するに際し、「並列に分流する」あるいは「米粒の流れを分岐させる」と表現したうちの、「流」あるいは「流れ」とは、成立に争いのない甲第三号証(第二引用例)によると、第二引用例に記載された精米装置体系全体からみての、米粒の移動を指しているものであり、第二引用例には、米粒の流れを並列に分けて移動させる技術的手段が記載されていることが認められる。

そして、審決が第二引用例を引用したのは、米粒の移動を並列に分岐させる点についての技術が本件出願当時公知であつたことを認定するためであつたことが、前記審決の理由の要点から明らかである。流れ搗精行程が第一引用例に記載されていることについては、当事者間に争いがなく、本件出願当時、流れ搗精行程は第一引用例によつて公知であつたから、この公知の行程について、第二引用例によつて認められる米粒の流れを分岐させるという技術的手段を適用することは容易であつたとの趣旨の審決の認定、判断に誤りはないというべきである。

したがつて、第二引用例記載の発明についてした審決の用語のみを捉え、文脈を離れて審決の判断の誤りを述べる原告の主張は理由がない。

3 まとめ

以上みたところによれば、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、本願発明の進歩性を否定した審決の判断に誤りはないというべきである。

三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

複数個の精白室によつて形成する直列流れ搗精行程を、その後半部の任意の過程において複数個の精白室によつて形成する並列流れ搗精行程に分岐した並列集団精米装置において、前記並列流れ搗精行程の精白室を加湿装置と多孔壁除糠精白筒とを備えた横軸精白室となしたことを特徴とする並列集団加湿精米装置。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!